インフラ老朽化問題とは? IoT・フィジカルAIが変えるメンテナンスの未来
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目次
第1章:忍び寄る危機──日本のインフラ老朽化、いま何が起きているのか
日本の道路、橋梁、トンネル、上下水道といった社会インフラの多くは、1960〜70年代の高度経済成長期に集中的に建設されました。それから半世紀以上が経過し、いま「一斉老朽化」という深刻な問題が現実のものとなっています。
国土交通省のデータによれば、建設後50年以上を経過した道路橋は2023年時点で全体の約39%。これが2033年には約63%、2040年には約75%にまで達する見込みです。トンネルも同様に、2023年の約27%から2033年には約42%へと急増します。港湾岸壁や河川管理施設も同じ傾向をたどっており、日本全体が「インフラの寿命」と向き合わざるを得ない局面に入っています。
こうした老朽化は、目に見える劣化だけでなく、地中に埋設された下水道管や水道管のように日常的に確認しにくい設備にも及んでいます。2025年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、地下インフラの老朽化リスクを改めて社会に突きつけました。インフラの老朽化は、もはや「将来の問題」ではなく「今そこにある危機」なのです。
第2章:国も本腰──20兆円規模の「国土強靱化実施中期計画」が始動
こうした状況を受け、政府は2025年6月に「第1次国土強靱化実施中期計画」を閣議決定しました。2026年度から2030年度の5年間で、おおむね20兆円強の事業規模が計画されています。これは防災・減災とインフラ老朽化対策を同時に推進する、過去最大級の国家プロジェクトです。
予算の内訳をみると、最も大きな割合を占めるのがライフラインの強靱化で、約10.6兆円。次いで防災インフラの整備・管理に約5.8兆円、官民連携や地域防災力の強化にそれぞれ約1.8兆円が配分されています。デジタル等新技術の活用にも約0.3兆円が充てられており、テクノロジーを活用したメンテナンス効率化への期待が読み取れます。
第3章:なぜ「予防保全」が求められるのか──事後対応の限界とコストの現実
インフラの維持管理には、大きく分けて「事後保全」と「予防保全」という2つのアプローチがあります。事後保全とは、設備が壊れてから修繕する方法です。一方の予防保全は、壊れる前に劣化を検知し、適切なタイミングで対処するという考え方です。
国土交通省の試算によれば、2019年から2048年までの30年間で、事後保全のままでは維持管理・更新費が約2.4倍に膨れ上がるのに対し、予防保全に転換した場合は約1.3倍の増加にとどまります。つまり、予防保全への切り替えだけで、約3割ものコスト削減が見込めるのです。
しかし、予防保全の実現には大きな壁があります。それが「人材不足」です。全国の市区町村のうち、橋梁保全に携わる土木技術者が「ゼロ」の自治体は全体の4分の1にのぼります。技術職員が5人以下の自治体も約5割を占めており、町の約3割、村の約6割では専門人材が不在という状況です。人手が足りない現場で、いかにして高頻度かつ精度の高い点検を実現するか。ここにこそ、テクノロジーが果たすべき役割があります。
第4章:IoTセンサーが変える現場──24時間365日の「見守り」がもたらす価値
予防保全を実現するうえで、いま注目されているのがIoTセンサーを活用した遠隔監視の仕組みです。橋梁の振動、トンネルの変位、水道管の圧力変化、コンクリートのひび割れ進行など、さまざまな物理データをセンサーが常時取得し、クラウド上でリアルタイムに可視化・分析できるようになっています。
従来の点検は、熟練の技術者が現場を巡回し、目視や打音検査で状態を確認する「人の手に頼る」方法が主流でした。この方法では点検頻度が限られるうえ、技術者の経験や勘に依存するため、見落としや属人化のリスクが常につきまといます。道路法改正(2013年)により、橋梁やトンネルには5年に1回の定期点検が義務づけられましたが、5年間の空白期間に生じる変化をどうカバーするかという課題は依然として残っています。
IoTセンサーによる常時監視は、こうした課題に対するひとつの解答です。点検の「間」を埋め、異常の予兆を早期に捉えることで、大規模な修繕に至る前に適切な対処が可能になります。省電力設計のセンサーであれば、数年にわたるバッテリー駆動で現場への設置負荷も抑えられます。データに基づく客観的な判断は、属人化からの脱却にもつながるでしょう。
第5章:フィジカルAIとインフラメンテナンスの融合──日本が目指す新たな競争力
2026年に入り、「フィジカルAI」というキーワードが急速に存在感を増しています。フィジカルAIとは、テキストや画像の処理にとどまるデジタルAIとは異なり、時間・空間・物理法則を理解して実世界で行動するAIを指します。ロボットやドローンが自律的にインフラ点検を行ったり、センサーデータから劣化傾向を予測して最適な保全計画を立案したりといった応用が期待されています。
日本政府もフィジカルAIを重要な国家戦略として位置づけており、製造業や物流、医療といった「現場」の強みを持つ日本が国際競争力を発揮できる領域として注目しています。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOがCESの基調講演で述べたように、フィジカルAIは「ChatGPTモーメント」に匹敵する転換点を迎えようとしています。
インフラメンテナンスの領域では、IoTセンサーが収集するデータがフィジカルAIの「目と耳」として機能します。温度、振動、圧力、画像といった多種多様なデータをAIが統合的に分析し、劣化の進行度合いを予測する。さらにはドローンやロボットがAIの判断に基づいて自律的に点検・補修作業を行う。こうした未来は、もはやSFではなく、実証実験が始まっている「すぐそこの現実」です。IoTとAIの掛け合わせによって、人材不足やコスト増大といった課題に対する本質的な解決策が生まれつつあります。
第6章:インフラ監視DXの実現に向けて──ミットディアができること
インフラ老朽化対策にIoTやAIを導入したいと考えていても、「どのセンサーを選べばいいかわからない」「システム構築の全体像が見えない」「PoC(概念実証)から先に進めない」といった声は少なくありません。インフラメンテナンスのDXは、単にデバイスを設置すれば完了というものではなく、課題の整理、デバイス選定、通信設計、クラウド構築、データ分析まで、多岐にわたる工程を統合的に設計する必要があります。
ミットディア株式会社は、IoTデバイスの選定・カスタマイズからクラウドシステムの開発、AIを活用したデータ分析まで、インフラ監視DXに必要な工程をワンストップで提供しています。鉄塔監視業務などインフラ現場で必要となるデータの取得ができるだけではなく、インフラメンテナンスで必要とされる長寿命・後付け可能なインフラメンテナンスシステムを提供しており、現場の制約条件を踏まえた「実装できるDX」を重視しているのが特徴です。インフラの老朽化対策にIoTやAIの活用を検討されている方は、まずは課題整理の段階からお気軽にご相談いただければ幸いです。
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